富士吉田市のカフェコンブリオさんの敷地にあるエゴノキの剪定枝を、ともだちのみほちゃんがわざわざもらってきてくれたのです。わたしが以前、エゴノキの削り心地がいいことをみほちゃんに話したことがあったのを、みほちゃんはずっと覚えていてくれて。忙しいのにわざわざカフェに寄り道して、それを携えてうちに来てくれました。

うれしくてうれしくて。それでお礼にスプーンを削るよ、どんなのがいい?と聞くと「カレースプーン的なの」とのことだったので、まずひとつ削ってみました。

▽そして久々に、最近の私的な工程をnoteのほうで書いてみました。

フシ偏愛の是非について。。

さて、今日は補足でフシについて、ひとつ。

細めの枝からスプーンをつくると、ありがちなことかとは思うんですが、さじ面を彫り彫りしていくと「フシ」が出て来たりします💦このときのスプーンもそうでした。

(野山の大きな木々とのつながりがあるみなさまは、もしかしたらあまり体験されてないことかもしれません)。

フシのまわりはどうしても、乾燥過程でそのほかの部分とは異なる動きを見せることになるので、ヒビや割れのリスクが大きくなります。実際、自分もサクラでスプーンを削ったときに、乾燥過程でフシまわりに割れが入ったことがあります。

でも乾燥時のテンションの差異を受け止められるだけのしなやかさがもともとある樹種ならば(今回のエゴノキはわりとそういう樹種だと思いました)、そして、しなやかに動けるように薄めに削ってあげて、そしてゆっくり穏やかに乾いていくように注意してあげれば、大丈夫だったりもするようです。

スプーンのさじ面は汁物や水に浸されるシーンも多くなるわけで、使うたびに「濡れる→乾く」という伸び縮み体験を繰り返すことになります。その負荷に耐え続けられるのかどうかーは微妙なところだ、とは思うのですが。。オイル塗装をしっかりして、十分にオイルのポリマー化を待ってから使い始めれば、濡らしたときの水分吸収も最小になるのではと思っています(長く使っているうちに、フシ部分だけ劣化が早まる、ということは予想できます)。

まだ検証中のことですし、フシ入り材を使うことをみなさまに推奨したいわけではないのですけども、わたしはさじ面にフシが出てきた時点でその材を投げ出してしまう、というふうにはできなくて、最後まで完成させてみて、自宅用に使ってみるようにしてます(贈り物用にと削り始めた場合、相手が気心知れた友なら、そのままあげて使ってみてもらってしまう!)。

そして削り後の乾燥過程で、もしくは使い出した後で、ヒビやワレが出てしまったら、その都度「あ、学びをいただいたな」と受け止めて、そこから、じゃあどうする?と考えます(その部分を削り取って全体をサイズダウンするとか、さじ面の形状を変えるとか)。

自分で使うものを自分でつくる、ということの良さはこういうときに感じます。心おきなく臨機応変にその材とつきあっていけるっていいです😊

フシのない材のほうがそれはいい、というか安心です。フシまわりは削りの方向も複雑になるので、やっかいさもあるわけで。。でも変態なところのある自分は、フシの味わいがどうも好きで。。。椅子をつくったときも、わざわざ背板にフシの入った部分を使ったりしてしまいました(ふつうしないですよね、先生ごめんなさい)。フシまわりのやっかいな削りも、むしろ楽しい。ほんとうにきめ細やかにその材と対話する必要に迫られるので。

なにごとも自分の責任でトライしてみる分には、経験と学びになる、と思っています。

もちろん、時間があまりとれないなかで贈り物として一定の完成度のものをつくりたい、というときには、肝心な場所に結構なフシが見つかったらその時点で早めに気持ちを切り替えていくことも大切ですが。。!

割れが入ったものをそのまま使い続ける

そういえば。以前ジャロッド・ダールさんのOne Treeという合宿講座の中で、小さなまな板をヤマザクラでつくったのですが、その頃からいろいろやらかしがちだったわたしはなんと、割れが入っていることに気づかないまま木取りをして、まな板づくりを始めてしまっていました。

ジャロッドさんが見にきてくださって、「割れが入っているね」と言われて気づき、がーんとなりましたが、そのときジャロッドさんがおっしゃったのは「このまま完成させて使ったらいいよ。うちにも割れが入ったまま使っているまな板があってね、別に平気だから」。

割れが入る=ジ・エンドだと思っていた私にとって、ジャロッドさんのひとことは目からうろこでした。

そういえばあの合宿中にジャロッドさんが示してくださった材への態度は、とても私の心に残ったのです。

作業工程をデモンストレーションとしてやってみせるとき、予定どおりにいかないところがあったときに、「これは今手にしている材が、こういう材だっていうことだから」と言って、淡々と受け入れて、その材と関り続けていき、「もし売り物用にものづくりをしていたなら、この材は使わないことにするかもしれない。。けど、今はみなさんも投げ出さずにこの材でやってみてほしいと思うんです」「むずかしいところはあるけど、美しい木だから」というようなことをおっしゃってた。

なんだかむしょうに嬉しかったのを覚えています。

そのあと、敬愛するスウェーデンのグリーンウッドワーカー、故ヴィッレ・スンクヴィストさんのドキュメンタリー映画の中で、ヴィッレさんが30年間、毎日朝食を食べるときに使っているというスプーンを紹介してくださっているのを見たんですが、そのスプーンに「去年小さなクラックが入ったんです、でも食べるのに支障はないんです」とヴィッレさんはおっしゃっていて。

そうなのかー、と思いました。

自分で使うものを自分でつくる、自分でつくったものを自分で使うって、自由だなあと思いました。

安全面でのことはなるべく客観的に見ていくべきですが、あとはそれぞれ、自分で判断していくことなのですね。

#フシ #割れ #木の個性


いろいろ試みたり書いたりする励みになりますので、よかったらofuseで応援いただけたらうれしいです😊↓

OFUSEで支援する