先日、バーガーショップに入ってお茶を飲んでいた時、目の前にいたアンスリウムの鉢植えと一緒に過ごす時間を持ちました。アンスリウムにやわらかく気を向けていたら、「ハート」という形について知らされました。

ハートとは、右からの流れと左からの流れが出会っていることに意味があるんだそう。それはアンスリウムの花と葉そのものもそうだし、人間の心臓もそうでしょう、と。そして人間にはみんな、ひとつずつハートがある、ハートを持っていない人はいない、ということを知らされました。

そうか、みんなハートを1つずつ持っていると思うと、なんだか安心する、と思いました。

そのあと削ったウラジロガシのテーブルスプンには、別に意図していたわけでないのに、持ち手の先っぽに淡くハート形が出てきました。

持ち手の表側に、ほんのりハート。

持ち手の先っぽの裏側に「隠しハート」のあるデザインのスプーンは、以前も何本か削ったことがありますが、表側にこう出たのは初でした。

こんな感じで、何かが現れてくるのを受け取りながらやっていて、毎回少しずつ違うものができあがります。

最近印象に残ったことが出てくることもあれば、そのときの木の木目やフシのありかによってデザインが導かれていくこともあり。

もちろん見た目だけでなく、実用性・機能性をいつも重視してます。持ち手の先っぽは、洗った後の水切れがよいこと、持ち手を下にして立てたときに接地面積が少なくなること、汚れがたまりにくいようにすることなどを常に考える…。

持ち手も、太さやカーブ、長さに応じて使い心地が変わるので、用途に応じて変えて(例えばアウトドア用のものなどは、持ち手を短くしてコンパクト性を上げ、持ち手の先に紐をつけられるような仕掛けをつくったり)。食事用スプンのボウル部分(さじ面)は特に、口に入れたときに気持ちいい厚み(なるべく薄く)と口から出すときに抜けのいい深さになるよう気を配っています。

実験と探究は続く…。^_^

木削りセッションでの伴走時に削るときも、セッション相手の方とは全然違うデザインになったりします。(大事なのは工程やコツを分かち合う土台になってもらうことなので、そのとき呼ばれたデザインで削っています)。

とはいえ、そのときどきのマイブーム的デザインはあったりします。最近だと持ち手をほんのりウェービーにするのがお気に入り。

ほんのりウェービーなイチョウ(横浜)のテーブルスプン

ほんのりウェービーなセンダン(藤沢)のデザートスプン

ほんのりウェービーなサクラ(京都)のテーブルスプン(これは昔けずったものだけど)

スプンのボウルの部分(さじ面)の形なども、卵形・まん丸・楕円形・長方形ぽい・正方形ぽい・三角ぽい、ほんとにいろいろ。

三角ぽいさじ面の、サクラのテーブルスプン

さらに「先ツン」型にする場合には、先ツンが真ん中に来ることもあれば、右にきたり、左にきたりしてアシンメトリな形になることも。先ツン部分は保存容器や器、お弁当箱などの角の部分にピタッとフィットするので、使い勝手がよかったりするのですが、アシンメトリになるとそれぞれ「右利きの方用」「左利きの方用」になります。

長年愛用しているサクラ(京都)の先ツン型のデザートスプン

上のスプンの削りたての頃(オイル塗布前)

アシンメトリースプンたちの例、左2本は左利き用、右2本は右利き用

あとは、首(ボウルと持ち手のトランジション部分)のデザインもいろいろあります。首は負荷がかかる部位なので、太さを残しておかないとですが、その太さの残し方も、幅を広くする(上の写真の左から2本目)、あるいは幅は細くして厚みを大きくする(上の写真の一番左)で、大きく印象が変わってきます。

最初にスプーンを削ろうとし始めたときに学んだのがスウェーデンの伝統的デザインの、大きなボウルと短い持ち手、スリムな首の食事用スプーン(日本だと取分け用スプーンになりそうな感じの…)で、日本の食卓でよくみる長い持ち手、小さめのボウル、幅広の首の食事用スプーンとは対極にある感じだったので、自分のスプーンデザインはその二極のあいだで楽しく迷走を続けてます^_^

伝統的な形を真似ることがまずは基本、と思うのですが、ひととおり伝統を参照したら、あとは「なんか好き」「なんか使いやすいかも」「これかわいいぞ」というときめきが、その木その木との関わりの中で出てくるのにまかせていけたら、と思っています…。