少し前にミニククサ作りをしたい、と木削りセッションの予約が入って、以前ククサづくりのワークショップをしたときにつくった資料を引っ張り出してきたり、改めてリサーチしたりしていたら、興味深い動画を見つけました。

ククサは本来は白樺のこぶ材でつくられてきたもので、それをこぶ材でない、木目の通った木、しかも生木からつくるというのは、なかなかにチャレンジング。乾燥中や使用開始後に割れることもよくあって、その原因としていろんなことが考えられてきてますが、スコットランドのハイランド地方でグリーンウッドワークをされているWooden TomさんことThomas Banksさんが、実際に40個のカップをつくってそうした諸説を検証してみた、という動画です。

日本語字幕(自動翻訳)がいまひとつわかりにくいというお話を聞いたので、以下ざくっと訳してみました(ご本人の承諾を得て以下共有します^_^)

How to stop your kuksa from splitting with HOT drinks

Here i test what actually stops your kuksa from splitting and what is a false myth

 

■「熱い飲み物を入れたときにククサが割れるのを防ぐには」by Wooden Tomさん

【動画最初~2:15】ククサの割れを防ぐための3つのヒント

1 大きめの丸太から木取る:半割りでなく、最低でも四ツ割りから
半割材からつくるのが、割れの最大の原因。

2 成形時は慎重に
斧・鑿・アッズ(ちょうな)といった「材に衝撃がかかる道具」でククサの外側・内側を成形するとき、傷やヘアラインクラックが入る場合があります。こうした極小のキズ・ヒビは、そのときは目には見えず、あとになって、熱い飲み物を入れたりしたときに、はっきりとした割れとなって現れます。

3.オイル塗装は必要なだけ繰り返して
トムさん作のククサやカップは、亜麻仁油にどぶ漬けし、飽和状態になるまで浸みこませ、完全に乾かしているそうですが、それでも、一部の導管にオイルが行き渡っていない場合があって、熱い液体を注いだときに水滴が外側に沁み出てくることがあるそうです。そんなときは、オイル塗装をもう1,2度繰り返すと、水滴の浸み出しは止まるそう。

【2:15~終わり】 諸説の検証

俗説①:水や塩水で煮れば、割れない
俗説②:丸太を四つ割り以上にしたものからつくれば、割れない
俗説③:材に衝撃がかかる道具によってついた切れ目が、あとになって割れになる
斧からの衝撃がかかるだけでも、あとなって亀裂が生じる場合がある
俗説④:側面の厚みが不均一だと、割れを引き起こす場合がある
側面の厚みをまちまちにしたカップ群で検証。

お湯テスト
「お湯を入れる→乾かす」を3日間のあいだに5回リピートして検証。

検証結果
・水で煮る&塩水で煮る:影響なし
・側面の厚みが不均一:影響なし
・側面の厚みがとても薄い場合:クラックは入らず。ただし水滴の浸み出しを防ぐには十分なオイル塗装が必要(オイル塗装を十分に行えば、水滴の浸み出しは止まった)
・スライス切りで入れた切れ目:側面の厚みが3㎜のカップでさえ、これといった影響なし
・材に衝撃がかかる道具類による負荷:衝撃が大きいと、あとになって割れが現れる原因になる
・半割り材からつくる:今回の実験では半割り材からつくったカップはすべて割れた

トムさんはバーチ材を使用。他の樹種で同様の検証をした場合、結果は全く異なるかもしれない、とのこと。

今回の検証は、持ち手などのないシンプルなデザインの、小ぶりの筒型カップで行った(壊れるかどうかを調べる実験にククサ40個をつくる労力を割きたくなかったため)。ちゃんとしたククサで検証するとまた違う結果になるかもしれない、とのこと。

「今回の検証によって、ククサの割れによる心の痛みを防げるようなら本望です」とのことでした^_^