マイクさんの「リビングウッド工房」

生木の木工は、先人がかつてしていたように、電気のない森の中で木を伐ったその場でやれたり、おうちの中で暮らしの一部として、編み物するような感覚で取り組めたりするところが魅力です。

そんなふうにしてきた&必然的にそうなってきた、私自身の経験を書いてみます。なにかのインスピレーションになれば幸いです😊

グリーンウッドワークに私が最初に触れたのは、マイク・アボットさんのところでした。そこは森の中にタープだけ張った文字通りの「リビングウッド工房(=生きた森の工房)」でした。

削り馬や足踏みろくろ、作業台がタープの下に置かれていて、作業中、前後左右はそのまま森の木々。

Benderと呼ばれるテント
たわめた枝で組んだ テント内

同じ森の中のそここに、枝で骨組みをつくった上にタープをかけただけのドーム型のテントが点在していて、その中で寝袋で寝泊まりして、みんなで焚火でごはんをつくりながら、太陽が出ているあいだは作業をして過ごすのです。

■リビングウッド工房(=生きた森の工房)での生活

テント入口(中から見たところ)

テントは入口がなぜかオープンなままになったつくりで、朝には野鳥が入ってきたり(シジュウカラやコマドリに会いました)。。。

テントの中に生えている植物がそのまま花を咲かせていたりもして、なんとものどかでした。

朝ごはんは焚火スペースで。各自がセルフでつくって食べてかたづけ、作業を開始。ランチと夕食はアシスタントの方が焚火料理をつくってくださいました。

照明がないので夜になると真っ暗。キャンドルで灯りをとりました。

焚火がキャンドルよりも明るいのと、夜は寒いのとで、みんな火のまわりに集って過ごしたものでした。

焚火には常にやかんが
焚火で調理

トイレはすべて手づくりのコンポストトイレ。洗面ももちろんです。

入浴は、黒いポリタンクに水を入れて日中の太陽で温めておいたのを、バケツに入れて枝の上まで滑車で上げてシャワーにするか、焚火で沸かしたお湯をたらいに入れて洗髪。

気持ちいいコンポストトイレ
トイレ(男性の小用)
洗面台
お湯を滑車で上げてシャワー
工房で作業するマイクさん

スマホの充電用に、小さな太陽光パネルが2枚だけ置かれてましたが、自分は使いませんでした。

グリーンウッドワークの作業をしながら、完全オフグリッドな1週間を森で過ごせて、幸せでたまりませんでした。。。

***

最初のグリーンウッドワーク経験が、森でのオフグリッド生活とセットだったせいで、私の中では「グリーンウッドワーク=野に眠りながら森の中でするもの」というふうに刷り込まれてしまっていました。

なので最初に岐阜の森林文化アカデミーへグリーンウッドワークの講座を受けに行ったときには、初めて岐阜に行くというのに、講座の前夜に長良川の河原で野営しました(お金がなかったのもありますが)。今思えば、ヘンな奴です!

野営した長良川河原

それからなんども神奈川から岐阜に、夜行バスで通い続けましたが、屋内に寝泊まりしながら屋内で作業をすることになかなかなじめませんでした。。。

今は、もう屋内に泊まって屋内で作業をすることをなんとも思わなくなりましたが、それでもやっぱり、自分の心の中には、マイクさんの「生きた森の工房」の記憶が、深々と根を下ろしています。果てしない憧れというか。

ただ日本では、気候の関係もあって、なかなか「 生きた森の工房 」のようなことは実現しにくいのも頭ではわかっています。

なにより私自身が土地もなければ、運転免許さえもない、街ぐらしのねずみ。森ぐらしのぐりとぐらに憧れつつ、いつかは「生きた森 の工房」を実現したいという夢を持ちつつ、当面は自分にできる範囲でやるしかありません。。

■リビングウッド工房からリビングルーム工房へ

そもそも普通の木工もやったことがなく、賃貸の自宅に工房にできるスペースがあるはずもなく。木工道具で持っていたのは彫刻刀と中学の技術家庭で使っていたノコくらい。。。という、ないないづくしからのスタートでした。

岐阜でグリーンウッドワーク指導者養成講座を受け始めてから、今の自宅でできるように小さい小さい規模で収まるように考えて、道具をそろえました。予算もなかったので、ヤフオクでめぼしい古道具を探して少しずつそろえたり、自作したり。

スペースの関係上、道具は必要最低限にすること、なるべく多用途かつコンパクトなものを選ぶことを考えてきました。

そうやっていろいろ工夫しながらグリーンウッドワークをやってきて、現在は、賃貸の平屋の、リビングの一角の、およそ畳一枚分のスペースに、「リビングルーム工房」が成立しています。

毛布とはつり台とチビスツール
バケツ型ツールラップ
ばらせる軽量削り馬

木工用作業台はありません。あるのはひざかけサイズの毛布1枚の上に、はつり台にしている玉切りの丸太1つ。

あと、グリーンウッドワーク専用にしている厚手のエプロンと、椅子のアームにかけた半自作のバケツ型ツールラップ(刃物やえんぴつ、ノギスなどが入っている)。

それから自作の軽量削り馬1台(削り馬はふだんは片づけてあって、使うとき出してきます)。

ツールラップに入れている以外のもろもろの道具類は、本棚にしている古いピアノ椅子の下に、ワインの木箱を置いて、そこに入れています。木箱に入らない大きさの、L字クランプ2本はピアノ椅子の横に掛けて、パイプクランプは木箱の向こう側に置いて、斧と大き目のノコははつり台の上に置いています。

ワイン木箱の道具箱、桐箱の砥ぎ道具箱(籠は編み物用、隣のトランクは削りためたスプーン入れ)
ワイン木箱の道具箱

砥ぎ道具一式は、ワイン木箱の隣の、桐の木箱に全部入れています。水を張るためのバケツだけは植物用のじょうろなどと一緒に置いてあります。

本棚にしているこの古いピアノ椅子は、賃貸物件に最初からあったもので、かなり重たいのでドリルで穴を開けるときなどちょっとしたときに作業台代わりになっています(作業するときは本をどかしてます)。穴あけは削り馬の座面でもできますが。。

座編みを待つ子ども椅子

グリーンウッドワークの材料は、基本的に生木なので、切ったばかりのものは北側・北東側の屋外に置くか、小さく割った後のものなどは袋に入れて冷凍庫で保存。

椅子のパーツなどで乾燥させる必要があるものはサンルームに置いています。

つくりかけのプロジェクトは家じゅう雑多な場所に置いてある。。。椅子の座編み用のロープも。

こんな感じの「リビングルーム工房」。

普段は半分に折ってカバー

普段ははつり台と斧にカバーをかけるように毛布は半分に折ってあります。

で、ちょっと削りたいなと思ったら、折っておいた毛布を開けばもうそこが工房です。毛布だと削りくずがひっつくので、リビングの他のエリアに削りくずが飛ぶのを最小に抑えられます。

なるべくエプロンに削りくずを集めるようにも意識しています。そして、削っている最中に宅急便が来たりして、そのまますぐ立って移動しなきゃなときでも、エプロンに集めた削りくずを散らさないよう、エプロンのおなか部分を瞬時にポケット化できる工夫をしました。

フリマで100円だったエプロン
片手でポケット化

エプロンの下端にループを2つつけて、おなかのところにボタンを1つ付けただけですが。。

毛布とエプロンに貯めた削りくずは、プランターに撒いて水分蒸発防止に使ったり、玄関までの土のアプローチに撒いて雑草防止に使ったりしています。

庭の生木の枝でつくったミニスツール、糊クギ不使用

今のところ、この「リビングルーム工房」で、カトラリーやシュリンクポット(小物入れ)のほか、大小のスツール、子ども椅子は作れています(組み立てなどの作業のときは一時的に畳一枚分よりもスペースを取りますが)。

以上、やりくりすれば「リビングルーム工房」でもなんとかなる、というのも、グリーンウッドワークならではかと思います!

■リビングルーム工房から、いつかは森へ?

「リビングウッド(生きた森の中の)工房」から「リビングルーム工房」へ、だいぶ内向きに小さくなった感がありますが、でも考えてみれば、これだけコンパクトな”工房”なら、そのまま森に持ち出せるかも?という気もします。

車と免許証がないのがネックですが。。そこも自転車(と一応免許だけはあるバイク)でどこまでやれるか、限界を試してみたいと思っています(ヘンな挑戦ですね💦)。

今のところ、どこかで木を切るというときにもらいに行くのも、携帯カートとイケアの大きな袋を持参して、電車とバスでなんとかやっています。近場なら自転車で。

森でちょっと木削りをしたいときには、バケツ型ツールラップとナタだけを持参したりしています。森で寝泊まりしながらのグリーンウッドワークは、とてもすばらしいので、もっとやれたらいいなあと思っています。。。


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