こないだは削り始める前の、生木のみずみずしさについて書いてみました。次のステップは斧での成形→ナイフでの成形→乾燥→ナイフで仕上げ削り→オイル塗装というのが、自分の最近の工程ですが、今日は一番最後、仕上げ削りが終わった後のオイル塗装について、書いてみます。

■オイル塗装しないケース

オイル塗装は必ずしもしなくていいもの、とも言えます。朴の木でつくる日本古来のグリーンウッドワーク、有道杓子は、 鍋など汁物に使うことが想定されますが 無塗装で使います。

朴の木を削ってつくった鍋物などに使う有道杓子、ミニ版と2つ並んでいるところ
有道杓子(ミニ版と)

料理ヘラなども、調理で使うにつれてだんだんと油が染みてくるので、最初は無塗装でもオーケーと考えることができますね。。

椅子やスツールなども、使い込むうちに手のひらの油脂分が少しずつしみこんで、艶やかになっていくのを見るのはいいものです。

4年半前に、近所の剪定枝のソメイヨシノで削ったコーヒースクープは、無塗装のままずっとコーヒー豆の瓶にいれっぱなしにして使っているのですけども、だいぶんとコーヒー風味の色味に育ってきました。艶も出てきて。焙煎したコーヒー豆の油分がだんだんとしみ込んで、オイル仕上げになってきました。

ちなみに4年半前の削りたてはこちら。削っていったら匙面の底に「♡」型があらわれたので、ときめきました。

余談ですが、これを削ったときは、コーヒースクープをつくろうとは思ってなかったのでした。当時の記録には「前回と同じような形のスプーンをつくろうと思って、削り出していったのだけど、削っていくうちに、コーヒースクープが木の中に見えてき ちゃって方向転換しました。(コーヒースクープはわがや用に欲しいな、としばらく思ってはいたのだけど。ここで出てきたので少し驚いた)。スプーンの柄にしようと削り出した部分を思い切って切り落とし、逆側を柄にして、コーヒースクープをつくりました。」

(今はこういうやり方ではないんですけど、この頃は匙面の先端の先に材を多めに余らせて、そこを削り馬で押さえて削る方法をとっていました)。

■オイル塗装するケース:どんなオイルがいいのかな?

話がそれてしまいましたが、オイル塗装の話に戻ると、熱いスープや冷たいミルクなど、いろんな飲み物や汁気のある食べ物に使うシーンが想定されるスプーン、カップ、ボウルなどは、最初からオイルを塗って表面を丈夫にしておくと、湿気や水分を吸いにくくなるので、変形や割れに強くなって長持ちすることが期待できます。

匙面の先のほうなど、薄く整える部分はとくに、そうしたリスクを避けておきたいですね。

オイルには、空気中に放っておくと(酸素と結合して)自然に乾燥して固まるタイプと、いつまでも乾燥しないタイプとがあります。前者を「乾性油」といって、木のカトラリーのオイル仕上げにはこのタイプのオイルを使うと丈夫さが長持ちします。

カトラリー類におすすめの乾性油としては、くるみ油、えごま油、亜麻仁油あたりでしょうか。いずれも食用できるものが安心です。

木削りする人によっても、何を選ぶか、どうやるかは、さまざまだと思います。正解があるものでもないので、以下は自分の場合を書いてみます (現在までの限られた経験のなかから) 。

くるみはアレルギーの方もいらっしゃるので、わたしは避けています。が、くるみをガーゼでくるんでてるてる坊主をつくって、その頭部分を(てるてる君には酷すぎますが😿)トンカチでつぶして、染み出した脂分を塗っていく方法は、手軽にできてとてもよさそうです!そのうちやってみます。

追記:本記事を書いた当時はくるみ油を避けていましたが、最近はバーニシング(小石を使った艶出し作業)をしてから少量のくるみ油を塗っています。

最初わたしは食用の亜麻仁油(ボイルしていないもの)を使っていましたが、完全に乾燥するまでに半年もかかることを知り(朝食のオートミールを食べる木の器は、アマニ油を塗って半年置いてから使い始めました。。。)、最近はもっと乾燥時間が速いといわれる、えごま油を使うようになりました。

食用のえごま油のうち、味や香りがきつすぎず自分好みの、紅花食品さんのえごま油を使っています。(最初スプーンの仕上げ用にと買ったんですが、おいしすぎて、ふつうに食事に使ってしまうほうが多く💦でも酸化も速いのでそれでちょうどよいかと思っています)。

いろんな根菜や葉野菜を蒸して、塩・胡椒をふりかけ、最後にこのえごま油を回しかけるだけで、めちゃくちゃにおいしい温野菜サラダが完成します!

スプンに塗った直後は、亜麻仁油もえごま油も独特の香りがあるので、なじむまでは少しビミョーです。

あと、亜麻仁油もえごま油も、塗ると木地がやや黄色っぽくなります。えごま油は、塗った後お日様によく当てると、茶色ぽくなっていきます。わたしはこの色味がすきなので、結構積極的に陽に当てています。でももともと白っぽい肌の木を白っぽいままで使いたい、というときはおすすめではないです。。

このほか、以前はブッチャーブロックコンディショナーというものを使ってみていたこともあります。蜜蝋とカルナバ椰子からとれる蝋と、ミネラルオイルが混ざったもの。 アメリカ製で、FDAの基準をクリアしていて食用のものに使えるクオリティ。ただ持ちがどうなのか、どのくらい早く乾いてどのくらい固まるのかは (ミネラルオイルは乾性油ではないので、固まる要素は蜜蝋とカルナバ蝋ということになるはずですが) まだ検証しきれていないです。

 

もうひとつ、これから検証を始めるのが楽しみなのが、スウェーデン製の酸化処理済の亜麻仁油 (ボイルしていないもの)です。

ふつうだと乾くまで半年かかる生絞りの 亜麻仁油 ですが、このオイルは 生絞りでありながら、あらかじめある程度酸素と結合させてあるため、木工品に塗った後の乾きが速いんだそうです。

以前から一度使ってみたいと気になっていつつ入手する手段がなかったのですが、グリーンウッドワーク用品を扱うイギリスのオンラインショップで見つけました。つい先日イギリス在住のともだちが一時帰国するときに、なんと買ってきてくださいました。(ひ)さん、ほんとにありがとう♡

とりあえず、乾燥時間の比較を試みています。 板の上にオイルを1しずくずつ垂らして、そのまま置いて観察して、乾燥にかかった日数を記録してみようかと。。どうなったかは後日ご報告します!

後日結果が出ました:こちら☞ https://guritogreen.com/2019/12/05/polymerize/

乾性油の乾燥時間は季節(温度・湿度)によっても違うはずなので、それぞれの季節に実際どのくらいで乾燥するのかを調べてみるのもいいと思います。 (やってみた方は、ぜひデータを共有してください)。

■オイル塗装の仕方

実際の塗り方ですが、わたしがふだんやるのは、最初にどぷっとたっぷりめに垂らして全体によくなじませて、そのまま10分くらい放置してしみ込ませてから、表面の余分な油をふきとります。これを3回(30分~1時間おきに)繰り返す感じです。

ふきとりには、ケーキ屋さんでケーキを買うといつもたくさんついてくる、紙ナフキンを使っています。ケバ立ちがないし、よく吸い取るので重宝しています。ふきとった紙・布は、自然発火の恐れがあるので、必ず水に浸してから処分します。

オイルで煮る(もしくは オイル+蜜蝋で煮る)というのもいい方法だと聞いたことがあります。より奥まで浸透するのかな。。。自分は試したことがないですが(大量のオイルを使うので、オイル仕上げするものが一度にたくさんあるときでないともったいなくて💦)、いつか試してみたいです。

追記:上にも追記しましたが、最近はバーニシングしてから少量のくるみ油を塗るようになりました。ほんの少量をまんべんなく。その少量を、時間を置いて2度くらい塗っています。くるみ油は湯煎で温めてから塗る方が乾燥が早いようなので、そうしています。

■使い始めてからのお手入れ

スプンは特に、使い始めてから「やっぱりここはこの角度だと使いにくいぞ」などの発見があったりします。そんなときはオイル仕上げ後であっても気にせず削り直しできます。削った表面にはまたオイルを塗って。。。

食事用スプーンなどは、オイルを塗って仕上げて、さらにカレーやヨーグルト、おかゆ、オートミールなどを食べるときに積極的に使っていくと、さらに丈夫に「育つ」ように思います。

木のカトラリーは、育てる楽しみがありますが、うまく育たなくて残念なことになる場合もあるかと思います。。

使用後、洗ったあと、柄を下にして立てて乾かしていると柄の先端が黒くなってきてしまったり。。匙面の先端がだんだん白く毛羽立ってきたり。。

使用後、洗ったら布ですぐ拭くのがベストです。が、水切りカゴで乾かしておくのがデフォルトな生活スタイルの自分は、木のカトラリは平置きできる水切りカゴに置いて乾かしています。水が切れるときに水が流れる距離が、カトラリの全長ではなく全幅になるほうが、カトラリ上の「水分の滞在時間」が短くなる、というのがメインの理由です。

北欧の国のキッチンには木のスプーン専用のラックがあったりしますね、こういうのをしつらえるのも便利そうです。

スプーンがくたびれてきたかなと思ったら、たまーに、薄く削り直したり、オイル塗装をし直したりしてお色直しをしています。

そんなことをするヒマも手段もないよーというときは、乾性油でない食用油(オリーブ油など)を塗ってあげるだけでも違ってくると思います。もちろん、くるみアレルギーのない方なら、くるみテルテル坊主もよいですし、蜜蝋ワックスやブッチャーブロックコンディショナーも便利かと思います。

(人に差し上げたスプーンをときどき健康診断で預かって、お色直しをするのも楽しみです、どういう木にどういうオイル塗装をすると、その後どうなるのか、を観察できるので。。。これまでに暮らしに迎えてくださったみなさま、よかったらどしどしお色直しさせてくださいー。)


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