ここしばらく、故障と怪我とが続いて、強制ストップがかかっているような日々でした。木削り大好きなのに、なぜ。。

最初に起きたのが、右手小指の違和感からのバネ指。バネ指になったのは初めてのことで、びっくりしつつ様子をみていたら、左手小指にも同じような違和感が出始め。。ナイフを細やかに使うのはやりずらいけど、斧なら大丈夫と思ってアックスワークをしていたら、今度は初めて斧で怪我をし(左手の親指をザクっと)。。指先をそこまで使わなくていいのは足踏みろくろだからと器挽き練習に戻ったら、今度は道具箱の角に右足小指をぶつけて骨折(人生初の骨折)。足踏みろくろのときに支える側の足がふんばれないのはきびしく、器挽きもストップに。

一連の故障と負傷を眺めていて、今のままグリーンウッドワークを続けるのは自分に無理がかかっているよ、というメッセージを、しかと受け取りました。

■人から教わるとき心に留めておきたいこと

最初にバネ指になったときは、長年お世話になっている野口整体のせんせい(樋田洋一先生)に個人指導のとき診ていただきました。帰り道、自転車に乗っていたら、あきらかにハンドルを握っている右手の中に気がとおって、ふっと、手の中の感覚が前のように戻りました。

それで気をよくしてまたナイフワークを再開したら、また悪くなり💦(せんせいごめんなさい)。

長年お世話になっているアレクサンダーテクニークの先生(トミー・トンプソンさん)にその直後にオンラインで教わる機会があったので、相談してみました。

そのとき最初に聞かれたのが「そのナイフグリップを教えてくれた人は男性?女性?」

女性から教わったののもあれば男性から教わったのもある。。けども、特にバネ指の原因になったと思われる特定のナイフグリップ(最近特に集中的に多用するようになっていたグリップ)は男性から教わったものでした。

そう伝えたら先生は「男性のほうが一般的に手が大きいし握力も強いから、教えてもらったとおりにやろうとすると無理がかかるかもしれないね」とおっしゃり。「教わったとおりにやることが大事なことではないよ」「教えてくれる人と自分との骨格や体力・握力の違いを見てね。そこを踏まえて、そのグリップをどうやるか、考えるといいよ」とアドバイスくださいました。

言われてみれば、当たり前のことでした。「教わった通りにちゃんとできるようにならなくちゃ」という考えが自分の中にあったんだなあ、と気づくと同時に、私の手のひらは成人女性一般とくらべても小さめであることを思い出しました。

(この後トミーさんはさらに突っ込んだワークをしてくださったのですが、それは別の機会に。。)

■いろんな人のナイフ使いを動画で見てみた

女性、男性、体格の大きな人、小柄な人、いろんなグリーンウッドワーカーの刃物づかいを動画で見てみることもしました。

するとそれぞれの人特有のナイフ使い、斧使いがありました。真似してみるととても快適に気持ちよくしかも美しく削れるグリップもあったりして、関心しました!

△最近真似してみて気に入っているのが、ナイフを握っている手の親指を刃の上に乗せ、主に切っ先付近を使って削るやり方。バーン・ザ・スプーンさん、ジョージョ・ウッドさんがやっていました。局所的に使ってみてますが、たいへんいい感じ。
切っ先付近を使うので、長いストロークにはならないけれど、刃に乗せた親指が、刃を材に安定的に押し当てるサポートになるせいか、きれいな切削面が出ます。

お話しつつスプーンづくりを実地で見せてくれるこの動画↑の中で、デボラ・シュネーベリさんはシザーグリップについて「多くの人がこれをやるけど、私、できないの、何か知らないけど肘がしっくりこなくて」と、かわりに別のパワー系のグリップを使っておられました。彼女が一番好きで多用しているのは、左手親指をテコにして向こうへ押し削りするグリップ。

ナイフの動きはものすごく繰り返しが多くなるから、いろいろポジションを変えることがポイントになりますね」とおっしゃりつつ、何が自分に合っているかを身をとおして見つけていっていらしてるのが印象的でした。

そして私の観念の呪縛を解いてくれたのは、ある場面で彼女が何気なく言ったひとこと。「これは私のスペシャル・グリップなの。誰しもそういうのを考案してると思うけれど」。

自分で考案する」。そうだ、そうしていいんだ、という、これまた当たり前のことに気づかされました。

私が教わってきたたくさんのナイフグリップも、代々伝えられてきたものもあるとはいえ、多くはヴィッレ・スンクヴィストさん自身がナイフで馬の木彫りをしようとしたときに「自分で考案した」とおっしゃられていたのだった、そういえば。(参照:『スプーンとボウルとナイフ スウェーデンの木工家、ヴィッレ・スンクヴィストのドキュメンタリー』)。

みんながそれぞれ創意工夫していって、集合知が豊かになっていくのは楽しいですね!

ただしナイフグリップの創意工夫では、身の安全を第一に。そのグリップをしていて「危ないかも」と自分が感じるなら、実際に危ないです。

安全確保のために、以下の確認を!
材・ナイフ(もしくは材を持っている手・ナイフを持っている手)への支えはある?
刃が材の中を通ったあとどこへ向かう?(刃の動きに対して”ストッパー”になるもの、もしくは”安全ベルト”になるものはある?)

■身体に無理のないように

無理な角度で指や手首や手のひらを曲げることがNGなのは、今回の故障をとおして身に染みてわかりました。一度くらいならいいかもしれないけれど、同じ動きを長いあいだ繰り返すことになるなら、故障を招きます。

私の場合、こぶしを握るという動作そのもののイメージが、実際の骨格と微妙にずれていたことを知りました。石井ゆりこさんにアレクサンダーテクニークのレッスンをしてもらって、ナイフグリップを見てもらったときのことです。

手の4本指が手のひらに向かって曲がってくる(屈曲する)とき、どの指もまっすぐ下に折れ曲がってくるのだと思って、そのように曲げていたのでした。

ゆりこさんが手を添えながら、実際に4本指を手のひらの方に折り曲げてくれれると、違う感覚がやってきました。4本指は垂直に手のひらに向かってくるというよりは、やや斜めに手のひらに向かってきたのです。「手相の感情線と頭脳線がつくりだしている、やや斜めに下がっていくライン」を軸に巻いてくる感じ。

そうやってこぶしを握る動きをしたとき、手のひらの中にやわらかさを感じて、小指のバネ指の症状がやわらぐのが実感できました。

ゆりこさんとのレッスンでは、親指に関しても同じことを知りました。親指も、「手相の生命線」のところが”折りジワ”になるような動かし方だと、無理なくラクに大きく動かせるということ。親指も、もっと手首に近いあたりから内側へ(手の中央へ)巻いて行けると知りました。

そうやって動かしていると、「手のひら」のイメージが、これまで「一枚板」的な感じだったのが、「どの隅からもくしゅっとまるめられる柔らかい布」に近いイメージになりました。すると、手のひらそのものの内側に軽やかで自由な空間を感じるようになりました。手のひらの中も、柔軟で動く!

感情線・頭脳線・生命線が”折りジワ”そのものになるような動かし方をすることを、今練習中です。シワを起点に曲げようとするのでなくて、「シワを挟んだ両隣の部分同士がお互いに近づく」と思うのがポイントです。するとより無理のない動きになる感覚がやってきます。

木の奥の声を聴きながら削ることも大切だけど、自分の身体の声を聴きながら削ることも大切だなあと、改めて思っています。


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